依頼主
経済産業省
調査期間
令和4年9月~令和5年3月
調査目的
製油所を中心として、カーボンリサイクル技術やグリーン化技術などの最新技術を取り入れながら、カーボンニュートラル達成に向けたコンビナートの目指すべき姿へのロードマップ策定までを調査業務の目的とする。
期待する成果
1.エネルギー移行期の海外石油コンビナートの国際競争環境調査
輸出入において競合相手となる中国、ベトナム等と中東を含むアジア各国、さらに米国等のコンビナートにおける投資動向及び戦略等の調査に加え、短中長期的な観点から脱炭素および資源循環型社会が進んだ主に欧州工業団地の実態やロードマップ変化、戦略等の海外情勢を俯瞰。
2.国内石油コンビナートの国際競争力評価・分析
国内外の石油コンビナートを対象に、製品の製造能力や収益性、環境配慮性等の指標を用いた国際競争力の比較分析・総合評価を行い、国内石油コンビナートの立ち位置や国際競争力強化に向けた課題の抽出、整理等を行う。
3.石油・石化製品の需給バランスに関する分析調査
国内石油コンビナート間の連携事案創出に向けた基礎資料として、日本の地域別の石油・石化製品等の需給バランスを調査する。
4.エネルギー移行期の低炭素化コンビナート将来像の構築
上述調査結果をもとに、我が国9地区コンビナートの目ざす絵姿の精度アップと第一政府目標(2013年度対比2030年度46%CO2削減)を9地区に試算設定する。これらに基づき、各地区固有のカーボンニュートラルソリューションの導入優先順位を付けたロードマップのひな型を策定する。また、これらをもとに今後各コンビナートで集積する産業全体の競争力強化に向けた対話促進を目論む。
調査結果
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000079.pdf
本調査からは、日本の石油コンビナートはアジア各国に点在する新鋭のコンビナートに比して、生産規模または原料アクセスの観点からその競争力において優位性を保持することが困難なことが窺える。このような厳しい環境の中で今後カーボンニュートラルへの取り組みを進めなければならない。そのためには、これまで以上の省エネ投資や一社単独ではなくコンビナート単位での高効率生産基盤の構築や生産体制の見直し、構造転換まで踏み込んだ活動が必須であると考えられる。
我が国9地区のコンビナートにおける2030年度のCO2削減値試算では、依然約500万tが政府目標値に届かず、今後本格検討、始動が期待されるCCS等の更なる施策も必要となる。その意味でも既存のコンビナート、更にはそれ以外の周辺事業体との連携も踏まえた、地域間での協議、活動の活発化が期待される。
また、海外に目を向ければ、早くから地球温暖化対策に取り組む欧州、広大な国土と潤沢な地下資源、更には十分に整備されたインフラを有する米国が優位な状況で先行する一方、先進国の大部分が2050年のカーボンニュートラルを宣言している中、人口規模が世界最大の中国、インドやグローバルサウスではそのCN目標を2060、2070年としており、各国の足並みは一様ではない。このような中、日本としては、技術の開発、移転、支援の観点からも、今後共アジア各国をはじめとする諸外国との連携強化にも並行して取り組むことは必然であろう。
本調査をもって、石油、化学コンビナートにおける日本の現状及び海外の取り組み状況を俯瞰し、関係者との間で将来のエネルギーのあり方やカーボンニュートラルにおける取り組みの一助となり、国内産業の発展、高度化に寄与できれば幸いである。